ヨーロッパのComputational Literary Studies Infrastructure (CLS INFRA)プロジェクトが、Survey of Methods in Computational Literary Studiesという、計算文学研究(Computational Literary Studies/CLS)の方法論の現在をまとめた研究動向レポートサイトを公開した。 初版は2023年3月31日付、最新のv.1.1.0は2023年5月5日付。

CLS分野の過去10年間の論文調査をもとに、CLSの主要研究テーマ5件と研究方法(研究フローの各ステップ)4件を、以下のように相互に関連させた二次元の表に集約している。

https://clsinfra.io/resources/d3-2-methods/

研究テーマ5件は次の通りである。

・スタイロメトリー(計量文体学)による著者推定
・ジャンル分析
・文学史研究
・ジェンダー分析
・文献の「正典化」の分析(the analysis of canonicity and prestige)

一方、研究方法4件は、上記研究テーマをそれぞれ進めるにあたって必要となる、以下の各ステップを意味している。
①コーパスビルディング
②前処理とアノテーション
③分析
④結果の評価

読者は、テーマに関心があれば、表の上から下に向かって、その該当のテーマの研究の流れを追いながら、各段階で必要な方法を知ることができるようになっている。また、方法に関心があれば、該当の方法論を横に向かって読むことで、各テーマを貫く共通点(と場合によっては相違点)を知ることができる。本レポートは「CLSの入門書」として書かれたものではないものの、CLSの重要テーマや方法論に関心があるものにとっては手引きともなりうるという。

なお、各ページで言及される文献は、全てZoteroのグループでその書誌情報が集約されている。また、レポートは、HTML版(https://methods.clsinfra.io/)とPDF版(https://zenodo.org/record/7892112#.ZGMnWy9Bz0o)がある。

調査レポートの書誌情報は次の通り。

Christof Schoch, Julia Dudar, Evegniia Fileva, eds. (2023). Survey of Methods in Computational Literary Studies (= CLS INFRA D3.2: Series of Five Short Survey Papers on Methodological Issues). With contributions by Joanna Byszuk, Julia Dudar, Evegniia Fileva, Andressa Gomide, Lisanne van Rossum, Christof Schoch, Artjoms ?e?a and Karina van Dalen-Oskam. Version 1.1.0, May 5, 2023. Trier: CLS INFRA. URL: https://methods.clsinfra.io, DOI: 10.5281/zenodo.7892112.

記事執筆:菊池信彦